「もう容量がいっぱいで、何もできないんです」
この相談、年間何十件受けているか分からない。
そしてほぼ全員が、全く同じことを言う。
「128GBで十分って言われたんです。事務用途しか使わないからって」
その言葉を信じた人が、数年後に「ストレージ難民」になって戻ってくる。これが量販店の売り場で毎年繰り返されている現実だ。
誰が悪いのか。正直に言う。128GBで十分と言った販売員が悪い。そして止めなかった私も悪い。
購入時、128GBは「十分」に見えた
購入時の状況を再現してみよう。
お客様のプロフィール:60代・定年後の再雇用・パソコンは仕事のメール確認とExcel・ネットショッピングくらい。予算は6万円以内。
これだけ聞くと、128GBのSSDモデルで「十分」に聞こえる。実際、128GBのSSDなら起動も速いし、ファイル保存くらいなら余裕があるように見える。
・メール・Web閲覧・Officeだけなら月に数GBしか使わない(ように見える)
・写真はスマホで撮るからパソコンには保存しない
・動画編集などはしない
・価格が5,000〜10,000円安い
でも、ここに大きな落とし穴がある。128GBの計算に「Windowsそのもの」が入っていなかった。
問題①:Windowsが勝手に太っていく
128GBのSSDを買った。でも購入時点で、すでにかなりの容量が埋まっている。
Windowsシステムファイル:約20〜25GB
回復パーティション:約10〜15GB(ユーザーには見えない領域)
プリインストールアプリ:約5〜10GB
Microsoft Office(付属の場合):約3〜5GB
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購入直後の実質的な空き容量:約40〜50GB
128GBと書いてあるのに、箱を開けた瞬間からすでに半分近くが埋まっている。これだけでも驚きなのに、問題はここから始まる。
Windowsアップデートのたびに容量が増えていく。
Windows10から11へのアップグレードだけで数GB〜十数GB消費する。月次の品質更新プログラムも積み重なると無視できない。年間で数GB〜十数GBが静かに増えていく。
購入から2〜3年後、気づいたら残り10GBを切っていた——これが128GBユーザーの典型的な末路だ。10GBを切ったあたりから、パソコンの動作が急激に重くなる。その理由は次のセクションで説明する。
回復パーティションとは、Windowsを初期化・修復するための特別な領域のこと。
通常のファイル管理画面では見えないが、確実に容量を消費している。128GBモデルでは10〜15GBがここに消えている。
削除することも一応できるが、そうするとWindowsの回復機能が使えなくなる。リスクを考えると、一般ユーザーが削除するべきではない。
問題②:容量不足で遅くなるメカニズム
「買った時より遅くなった」という相談は後を絶たない。
ウイルスを疑う人が多いが、その多くの原因はストレージの空き容量不足だ。
なぜ容量が少ないと遅くなるのか。Windowsは作業する際に「仮想メモリ」という仕組みを使う。メモリ(RAM)が足りない時に、ストレージの一部を一時的なメモリとして使う仕組みだ。
ストレージの空き容量が少ないと、この仮想メモリの領域が確保できなくなる。結果として処理が滞り、パソコン全体が重くなる。
空き容量が30%以上:性能フルで発揮
空き容量が20%前後:体感速度が落ち始める
空き容量が10%以下:動作が明らかに重くなる。フリーズも増える
空き容量が5%以下:アップデートも満足にできない。実質的に使用不能
128GBモデルの「実質的な空き容量」は40〜50GBからスタートしている。30%を維持しようとすると、残り40GBを超えないように管理し続けなければならない。これを一般ユーザーに求めるのは酷だ。
問題③:対処しようとしたら詰んだ
「容量が少ないなら削除すればいい」——そう思った人は、次の現実を知っておいてほしい。
不要ファイルの削除は焼け石に水だ。
ゴミ箱を空にする、一時ファイルを削除する、デスクトップのファイルを整理する——これで解放できるのはせいぜい数GB。Windowsのシステムファイルや回復パーティションには手が出せない。削除したいものはほぼ削除できない。
- 不要ファイル削除:数GBの改善がせいぜい。根本解決にならない
- クラウドへ移行(OneDrive等):無料枠はすぐ埋まる。結局月額課金が必要
- 外付けSSDに移す:別途5,000〜15,000円の出費。持ち運びも不便
- Cドライブのクローン(より大きなSSDへ引っ越し):専門的な作業が必要。失敗するとデータ消失のリスクも
- 結末:どれも中途半端に終わり、結局「新しいパソコンを買う」という選択になる
売り場で「容量がいっぱいで困っている」という相談を受けたとき、根本的な解決策を提示することがほぼできない。できることは「新しいパソコンへの買い替えをご検討ください」という一言だけだ。これが現実だ。
販売員の本音——128GBは存在自体がミスマッチ
ここは正直に言わせてほしい。
2026年現在、128GB SSD搭載のパソコンは存在自体がユーザーのニーズとミスマッチだと思っている。
なぜ128GBモデルが存在し続けるのか。答えは「価格を下げてラインナップを埋めるため」だ。スペック表の価格を見た瞬間に「安い」と感じさせる効果がある。でもその安さには理由がある。
128GB搭載モデル:約X万円
256GB搭載モデル:約X万円+1〜2万円
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128GBを選んで2〜3年後に買い替えた場合のコスト:約10万円以上
1〜2万円ケチったせいで、数年後に10万円の損が生まれる。
128GBモデルを売ると、数年後に「容量がいっぱい」という相談が来て、最終的に新しいパソコンを売ることになる。販売台数は上がる。でもそれは「お客様の不幸の上に成り立った売上」だ。20年この仕事をしてきて、そういう売り方には加担したくないと思っている。
2026年の正解ストレージと予算別の選び方
では、今どれを選べばいいのか。明確にお伝えする。
- 最低ライン:256GB SSD——事務用途・ネット閲覧・メインの日常使いならここから
- 推奨:512GB SSD——写真・動画を少し扱う、長く使いたい人はこちら
- 余裕があれば:1TB SSD——動画編集・大量の写真管理・ゲームも視野に入れるなら
- 絶対に選んではいけない:128GB——理由はこの記事を読んだ通り
- 論外:HDD——2026年にHDD搭載のノートパソコンを選ぶ理由は存在しない
ストレージは「今使う量」ではなく、「3年後の自分が使う量」で選んでください。その一言が、将来の後悔を防ぐ最大の防衛策だ。

